「中国残留日本人孤児」とは
①日本人の両親から出生
②終戦前後の混乱で保護者と離別
③その当時の年齢が満12歳以下(13歳以上は残留婦人と呼ぶ)
④本人が自分の身元を知らない(実際知っている人もいる)
⑤当時から中国に残留
の5条件をすべて満たす者。最近では残留婦人の子供も孤児と認めるなど、緩和の方向にある。
孤児となった原因
撃滅孤児(戦場となった跡に取り残された者、保護者自殺含む)
退避孤児(退避する途中ではぐれ、または捨てられたもの)
難民孤児(奉天等の都市に避難してきた難民収容所に生活中、保護者である父母の死亡や病気のために、中国人にもらわれたか買われた者)
拉致・誘拐孤児(連れ去られた者)
特に、難民孤児が大半である。これは、収容所生活の悲惨さをうらづけている。引揚げの際、預けた子供を引き取りにくいって、中国人養父母の拒否にあったケースも多い。離別前の保護者の職域では、開拓団がほぼ7割となっている。在満日本人の14%を占めたにすぎない開拓団員から、日本人死亡者の半数を出した事実と符号する数字である。
1949年、日本帝国主義の侵略とねばり強く戦った民族解放戦線(中国共産党が主導)は、内戦再開で蒋介石の国民党を倒し、中華人民共和国を樹立した。しかし、第2次世界大戦中から社会主義国、ソ連を戦後における最大の敵としていたアメリカは、新中国に対しても敵意をむき出しにし、承認をこばんだ。中華人民共和国を敵視した日本政府は、侵略戦争で最大の被害を与えた中国に対して戦争責任をとるどころか、国交すら結ばず、無視した。52年には台湾政府を「正当な中国政府」と認める「日華平和条約」を結び、日中関係を悪化させた。
戦後国政府の第1の任務は、占領地に残した国民の保護・収容である。国交もない悪条件のもと、日本人引揚げは、人道的見地から、中国紅十字社、日本赤十字社、日中友好協会の努力で細々とすすめられた。しかし文化・経済交流などで保たれていた善意の「積み重ね外交」も58年いっきょに崩壊する。58年5月、長崎で右翼青年による中国国旗侮辱事件が発生。政府の甘い対応を中国は激しく批判し、日本人引揚げは断絶した。7月の白山丸入港を最後に舞鶴引揚援護局は閉鎖され、その後13年間、引揚げを含む一切の交流は中断された。さらに「未帰還者に関する特別措置法」(59年制定)等により、海外に残された多くの日本人が、本人の生死、帰国意志の有無不明のまま戦時死亡宣告を受け、戸籍から抹消された。中国に残された人々から帰国の希望をむしりとった13年にわたる引揚げの中断、それを引き起こしたのは日本政府の外交政策であった。
1958年、最後の引揚げ船が港を離れていった時、中国には1万人を越す日本人婦人や孤児が取り残されたといわれている。中国に残された日本人は各地に散らばり、ある人は中国人の妻となり、あるいは中国人養父母に育てられ、ある人はたった1人で祖国日本に見捨てられた人生を歩みはじめた。それは故国に見放されたと同時に、かつて敵国で、日本が侵略した国の人々の間に生きる苦しい営みであった。そして中国も又歴史的な激動期を迎えていた。
年表
1931年 9月18日 満州事変
32年 3月 1日 満州国設立
9日 溥儀、満州国執政に就任
34年 中国、国民党と共産党の対立から、内戦激化
共産党が西北に向けて移動開始(長征)
36年 満州国開拓移民、20年間で100万戸500万人計画決まる
37年 7月 7日 蘆溝橋事件が起こる
日中戦争始まる
9月 7日 国民党と共産党が共同組織を結成
12月 7日 南京事件が起こる
39年 9月 1日 第2次世界大戦始まる
41年 アジア太平洋戦争始まる
43年 9月 8日 伊、無条件降伏
45年 4月 28日 ムッソリーニが処刑される
30日 ヒトラーが自殺
8月 6日 米、広島に原爆投下
9日 ソ連軍、満蒙国境より侵入を開始する
米、長崎に原爆投下
15日 日本ポツダム宣言受け入れる
18日 皇帝溥儀が退位する
9月 7日 連合軍の命令により満鉄閉鎖
49年 中国、 共産党が内戦に勝利して、中華人民共和国設立
66年 中国、 文化大革命始まる
72年 日中国交正常化
78年 日中平和友好条約が結ばれる
参考文献
中国残留日本人孤児 大場かをり・橋本進(編)森村誠一(序) 草の根出版
アジア太平洋戦争の研究 監修鎌田和宏 ポプラ社
アジア読本 中国 曽士才・西澤治彦・瀬川昌久 河出書房新社
現在の日本史 鳥海靖・野呂肖生・三谷博・渡辺昭夫 山川出版社
世界史A歴史と現在 加藤晴康・濱下武志・中村充一・菅原敦子・須賀俊和 東京書籍
日本と世界の歴史 第22巻第2次世界大戦
朝日百科日本の歴史11近代Ⅱ 朝日新聞社
斉藤整の世界史タテから見る世界史 斉藤整 株式会社学習研究社
アジアの歴史3 中国の歴史 あすなろ書房
中国の友だち 監修 佐藤郡衛・細島雅代 学習図書